● 鍼灸治療はいつごろから始まったのでしょうか?

 人類の医療活動は、生産活動の開始と同時に始まりました。鍼灸治療の歴史は、かなり古く新石器時代(1万年前~)にさかのぼると言われています。当時の鍼治療には、中国最古の原始医療器具として知られる「へん石」「骨鍼」(こしん)と呼ばれる石の先端を矢じりのように尖った鋭利な石片が利用されていました。へんせきを患部に当てたり、浅く刺したりして、痛みを取り除いたり、また膿包を切開するためのメスとしても利用されていました。 
 また、暖めて患部に当てるわいほうと呼ばれる温熱治療にも利用されていました。これらの原始的な医療活動が、鍼灸の歴史の始まりと考えられています。

 殷の時代に亀甲文字によって記録が行われるようになると、紀元前21世紀頃より長期に渡る医療の実践経験が蓄積され、徐々に疾患に対する認識は深まっていったようです。鍼灸の歴史に関する直接の記述は見られまいものの、呪術、薬草、鍼灸治療などの本格的な医療活動が行われた結果、治療病名の記載なども見られようになりました。

鍼灸治療家扁鵲(へんじゃく) 鍼灸の歴史上、鍼灸治療がはっきりと記載された初めての歴史書は、中国前漢の武帝の時代に司馬遷によって編纂された中国の歴史書『史記』(しき)です。史記には、治療家扁鵲(へんじゃく)が登場します。扁鵲には気を感知するする能力があり、病人に鍼灸で刺激を与えたり、動物・植物・鉱物などを与えて、治療したとの記載があり、今日の東洋医学・鍼灸医学の歴史上の起源であると推測されています。




● 日本における鍼灸治療の起源は?

 日本における鍼灸医学の歴史の起源は、僧侶智聡(ちそう)が仏典と共に鍼灸医学書を携えて来朝した562年とされています。その後、聖徳太子が遣隋使を派遣し、2世紀に渡って中国文化を積極的に輸入する中で、鍼灸医学も伝わりました。
 平安初期には、唐で学んだ医僧が多くの医学書と共に、高度な中国鍼灸医学をが日本に伝えました。
 この当時の歴史書によると、鍼灸医学は限られた階級の人のみに与えられる貴族医学で、一般庶民は民間療法や加持祈祷に頼っていたようです。

 808年には平城天皇の命により100巻から成る『大同類聚方』(だいどうるいじゅほう)が編纂されました。日本の医学の歴史上、初めて編纂されたこの医学書は、日本古来の医術が失われることを危惧して、日本全国よりの民間処方、家伝治療、家伝薬、鍼灸などが収載されていました。
 しかし、この大同類聚方は現存せず、当時の日本固有の鍼灸医学がどのような姿であったかは不明です。

鍼博士 丹波康頼(たんばやすより) 日本の鍼灸医学の歴史の中で、鍼灸治療に関する歴史書として現存するのが、984年に丹波康頼(たんばやすより)鍼博士によって編纂された『医心方』の第2巻は鍼灸篇です。
 この医心方には、中国の伝統鍼灸医学を単に編集しただけでなく、中国鍼灸医学が日本の鍼灸医学として、独自の発展を遂げた記載が見られます。
 鍼灸経絡の理論にとらわれず、実用的に鍼灸を応用しようという試みがみられます。

 
 日本の鍼灸医療の歴史は、存亡の危機にさらされたことも幾度となくありましたが、今日まで1500年間の長きに渡り、脈々と伝えられて来た、日本人の風土、体質に合った素晴らしい医学です。

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