庄司政満らのの研究グループは、ジャコウ製剤の新しい薬理作用の研究を行い、褐色脂肪組織の温度上昇、抗肥満作用、抗高脂血症作用、抗ストレス作用などの新しい薬理作用があることを示しました。
この研究を始めるきっかけとなったのは、中村祥二著の「香りの世界を探る」という一冊の書物でした。
著者がジャコウを服用した時の経験を記述している文章に、次のようなくだりがあります。
「ジャコウを服用後しばらくすると奇妙なことが私のからだに起こった。初冬の夜の研究室は、そのとき暖房も切れ、冷気が広がっていた。それなのにからだが温まりはじめ、手足に伝わっていくのが感じられた。心臓の鼓動も速くなってきたようだ。私は霊薬を飲み込んでしまっていたことに気づいた」。
これを読んだ研究者は、ジャコウ製剤にエネルギー代謝を高める働きや末梢の血行改善作用があるのでないかと、新しい薬理作用の探索を始めました。
今回は、日本生薬学会発行の生薬学雑誌、Natural Medhicines 51(2),108-124に掲載されたその研究成果をご紹介しましょう。
主薬ジャコウの働き
ジャコウは、ジャコウジカの線分泌物です。古来より高貴薬として珍重され、芳香開竅薬(ホウコウカイキョウヤク)として、全身の気の巡りを良くして、気の停滞や上昇によって生じる様々な病態に用いれて来ました。
現代医学では、強心作用、鎮痙、鎮静、呼吸機能を高める働きなどが確認されています。
ジャコウの体温上昇作用
一般に脂肪と言いますと、過剰なエネルギーを中性脂肪という形で蓄える白色脂肪組織のことを言います。
しかし、もう一つ余分なエネルギーを熱として体外に放出する熱産生臓器としての褐色脂肪組織もあります。
この褐色脂肪組織は交感神経の支配を受けていて、NE(ノルエピネフリン)が褐色脂肪細胞の受容体に結合すると熱産生を高めることが分かっています。
研究グループは、ラットに経口でジャコウ製剤「感応丸気」を服用さて、体温が上昇しない程度の少量のNEを投与するとすることで、有意に褐色脂肪組織の温度を上昇させて活性化することを発見しました。
さらに、食事による体温上昇も、この交感神経が作用していることから、ジャコウ製剤を経口摂取後に、餌を食べさせたところ、やはり褐色脂肪組織の温度と体温(直腸温)が有意に上昇しました。
ジャコウ製剤を服用すると、運動などで筋肉を動かずじっとしているだけでも、褐色脂肪組織が燃焼し、体温が上昇することが示されました。
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本内容は、大阪府堺市 三砂堂漢方 三砂雅則が解説いしました。