新型コロナウイルス感染症は私たちの生活スタイルを一変させました。一人きりの孤独感、テレワークによる家族関係の悪化、ⅠＴ化推進によるパソコン疲れ、新型コロナウイルス変異株オミクロンへの恐怖など。その上外出などでのストレス解消方法までが制限されて、私たちは今、大きなストレスを感じるようになっています。
　「ストレス」という言葉をはじめて用いたのはカナダのセリエです。ストレス反応とは、外部から寒冷刺激、外傷、疾病、あるいは怒りや不安などの精神的緊張などのストレス（ストレスのことを正確にはストレッサーと呼びます）を受けたとき、ストレスに適応しようとして身体に起こる適応反応のことで、決して悪いものではありません。ストレスがかかると、脳の視床下部から脳下垂体へ、さらには腎臓の上にある副腎の皮質に向けて、刺激ホルモンが分泌されます。すると血液中にコルチゾールというストレスホルモンが分泌され、身体の中では、副腎肥大、胸腺リンパ組織の萎縮、血圧・体温・血糖値の上昇、筋緊張の増加などの変化が起ります。これら一連の流れはＨＰＡ系と呼ばれ、ストレスに適応できるよう活動を活発化する働きで、このお陰で、仕事や運動などを頑張ることができるのです。しかし、慢性的なストレス状態では、怒り、イライラ、睡眠の質低下、疲労感など様々な不定愁訴を感じるようになり、身体は疲弊して来ます。
　三砂堂漢方では、慢性ストレスのメカニズムと、マガキから発見された新規抗酸化物質「ディーバ」によるストレス改善の働きについて紹介したいと思います。

１．慢性的ストレスがかかると身体はどうなるの？

　一日の仕事が終わり、夜にリラックスできると、ストレスホルモンは肝臓で分解され尿中に排泄され、血液中から除かれます。
しかし、コロナ禍の生活のように、慢性的なストレス状態では、まず脳内に過剰な活性酸素が発生します。活性酸素は脳の細胞を傷つけ、特に海馬体細胞の膜表面にあるストレスホルモンの受容体を減らしてしまいます。海馬体は血液中のストレスホルモン濃度を監視し、視床下部はその情報をもとに濃度を制御しているのですが、受容体が減ることで副腎皮質からストレスホルモンが過剰に出続けることになります。このストレスホルモンの分泌過剰が、怒りイライラ、睡眠の質低下、疲労感を感じさせる原因なのです。

２．渡辺オイスター研究所がマガキから、新規の抗酸化物質ディーバ発見

　　渡辺オイスター研究所は、世界で初めてマガキから新規の抗酸化物質ディーバ（DHMBA）3，5―dihydroxy―4－methoxybenzyl alcoholを発見しました。脳には、有害な物質から脳細胞を守るための血液脳関門という関所があるのですが、ディーバは血液脳関門を通過できる貴重な抗酸化物質で、ストレスで過剰に発生した脳内の活性酸素を効果的に消去することができます。しかも、抗酸化物質の代表であるビタミンＣの２．３倍、食物に含まれる人気のポリフェノール「ロスマリン酸」の５倍もの強力な抗酸化作用を持っています。

３．ディーバはイライラ感を緩和し、睡眠の質改善する

　ディーバはストレスによって発生した脳内の活性酸素を消すことで、過剰に分泌されたストレスホルモンを低下させ、ＨＰＡ系の暴走を止め、ストレス応答を正常にすることが、日本未病学会誌で発表されました。厚生労働省の職業性ストレス簡易調査票（BJSQ）を用いて高ストレス者にディーバを経口投与した結果、プラセボ（偽薬）群に比較してディーバ投与群は、５倍ものイライラ感の改善が見られました。

　　血液中のストレスホルモンの濃度が高い状態が続くと、悪夢を見るなどの睡眠の質が低下することが分かっています。ディーバはストレスホルモンの濃度を下げて、睡眠の質を改善することが分かりました。先の調査票で選んだ高ストレス者３２名に、睡眠調査票ＯＳＡ―ＭＡを用いて、ディーバを摂取させた場合の起床時の睡眠状態を評価しました。その結果、夢みの得点は、プラセボ（偽薬）群の１８．５に対してディーバ群は２５．９と、睡眠の質が大幅に改善することが示されました。

４．ディーバは疲労感を改善する

　疲労・疲れの正体は、昔よく言われた「乳酸」ではなく、「活性酸素」のたまり過ぎで、エネルギーを作る仕組みが損傷し、パワーダウンをおこしている状態です。疲労を除くには、体内の活性酸素濃度を低下させる必要があり、抗酸化物質であるディーバは、疲労を改善する働きがあることが分かりました。
　健康な４０～６０歳代の男女４２人に日常生活で感じている一過性の疲労感に対して、ディーバ摂取でどの程度疲労感が改善するかを調べました。ディーバ摂取群２０名とプラセボ摂取群２２名に、４週間摂取している間、POM-Sという主観評価のアンケートを実施しました。その結果、ディーバ摂取群は１週目と４週目に、疲労感軽減に伴って疲労スコアが大きく改善しました。ディーバが日常生活の疲労感軽減に有効であることが示されました。

５．機能性表示食品として認可

これらの研究結果を踏まえて、ディーバを含有する「渡辺オイスターディーバゼリーＳ」は、消費者庁の厳しい基準をクリアして「ストレスの緩和」「睡眠の質」「疲労の軽減」の３つの機能に対して、「機能性表示食品」の届け出が受理されました。

６．ディーバ参考文献

参考文献
1)渡邉 貢.渡邉 孝之.脳内酸化ストレスに起因する視床下部－脳下垂体－ 副腎皮質系亢進マウスに対するマガキ軟体部由来の抗酸化物質 3,5-dihydroxy-4-methoxybenzyl alcohol（DHMBA）の抗酸化作用とストレス緩和作用.日本未病学会雑誌： 26(1) (2020)

2) 渡邉 貢，渡邉 孝之.脳内酸化ストレスに起因する視床下部－脳下垂体－ 副腎皮質系亢進マウスに対するマガキ軟体部由来の抗酸化物質 3,5-dihydroxy-4-methoxybenzyl alcohol（DHMBA）の抗酸化作用とストレス緩和作用.薬理と治療: 46(3) (2018)

3) Mitsugu Watanabe, Emiko Miki, Er Jin Eio, Mitsuhisa Takahashi, Riko Fukuda.Effect of intake of jelly compounded with 3,5-dihydroxy-4-methoxybenzyl alcohol (DHMBA)-containing supernatant extracted from soft tissue of the Pacific oyster (Crassostrea gigas) on fatigue in healthy middle-aged men and women. －Randdomized, Double-blind, Placebo-controlled, Comparative Study－.Journal of Functional Foods: 35, 2017

4) Joko S., Watanabe M., Fuda H., Takeda S., Furukawa T., Hui S.P., Shrestha R., and Chiba H.Comparison of chemical structures and cytoprotection abilities between direct and antioxidants.薬理と治療: 45(2) (2017)

5) 渡辺 貢, 三木 恵美子, 渡辺 孝之, 片桐 正伸, 福田 理子, 裏出 良博.3,5-dihydroxy-4-methoxybenzyl alcohol (DHMBA) 含有牡蠣肉エキス飲料摂取によるストレス, 疲労, 睡眠への影響　―無作為化二重盲検プラセボ対照並行群間比較試験―.薬理と治療: 45(1) (2017)

6) 渡辺 貢, 三木 恵美子, 裏出 良博.酸化ストレスマウスに対するマガキ軟体部抽出液に含有されるフェノール系抗酸化物質3,5-dihydroxy-4-methoxybenzyl alcohol (DHMBA) の抗酸化作用とストレス緩和作用.Journal of Functional Foods: 20, 2016

7) Watanabe M., Fuda H., Okabe H., Joko S., Miura Y., Hui S.P., Yimin, Hamaoka N., Miki E., and Chiba H.Oyster extracts attenuate pathologial changes in non-alcoholic steatohepatitis (NASH) mouse model.Food Chemistry： vol.176, 2015

8)Fuda H., Watanabe M., Hui S.P., Joko S., Okabe H., Jin S., Takeda S., Miki E., Watanabe T., and Chiba H.Anti-apoptitic effects of novel phenolic antioxidant isolated from the Pacific Oyster (Crassostrea Gigas) on cultured human hepatocytes under oxidative stress.Medical Science Digest:41 (2015)

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本内容は、大阪府堺市　三砂堂漢方　三砂雅則が解説いしました。