アトピー性皮膚炎、化膿、湿疹 長引く皮膚の病
幼児から老人迄、ツライ、かゆい、肌のアレルギー、化膿、湿疹。長引いて、増加傾向にある現代人の皮膚の病です。
厚生労働省「患者調査」より、皮膚病の患者数を年齢別に調べてみると、圧倒的に15歳迄の子供と高齢者に皮膚病患者の多いことが分かります。
更に調べると、15歳未満の子供の場合のほとんどが、アトピー性皮膚炎のようです。このアトピー性皮膚炎は、アレルギーマーチの一環として起こってくる場合が多く、アトピー性皮膚炎の体質改善をしないと喘息やアレルギー性鼻炎に移行することにもなります。
また、中高年層になると皮膚の代謝や抵抗力が弱<なる為、種々の湿疹や皮膚癌峰症といった皮膚病の発症が多くなってきているようです。風邪は誰でもかかるありふれた病気、一年に数回はかかるといわれますが、一ロに風邪といっても原因は色々、そして症状もまた様々です。
ある健康調査では、保育所に通う幼児から高校生までの内、8~9割の子供が身体の苦情にアレルギーをあげているそうです。そして今後も益々このアレルギーが増えてくることが予想されています。
そして、このアレルギーの中でも皮膚病を訴える人は多く、疾患が慢性化して長引き悩んでいる子供が多いのが現状でもあります。
また、高齢化が更に進んでいる日本では、老人の皮膚のトラブルも増え、その治療を長引かせている人が多くなっています。
今こそ辛い皮膚病の早期対策、治療への取り組みが必要です。
どんな病気?皮膚病
皮膚病とは見方を変えれば八百八病!
昔、江戸の町は八百八町、浪速の町は八百八橋と言われていました。たくさん町や橋があることを言い表わしていますが、この考えを皮膚病にもあてはめますと、病状・症状にも色々な形態がたくさんある為に、このように八百八病のある病気と考えても良いものです。
そこで、この皮膚病についてより詳しく説明しましよう。
1.皮膚の仕組みと働き
1-1.皮膚の仕組み
そして、皮膚は外側より表皮、真皮、皮下組織の3層に分けられ、表皮が01mm、真皮が19mmの厚さになっています。
1-2.皮膚の働き
- 保護作用:外灯らの機械的刺激を和らげ、細菌を殺し、紫外線なら身体を守ります。
- 体温調節作用:汗腺と皮膚毛細血管の働きにより、一定の体温を保っています。
- .分泌作用:発汗により、水分や老廃物を体外に排泄します。又汗は皮脂腺から分泌される皮脂と混じり乳剤となって皮膚面を潤します。
- 知覚作用:外界との接触の第一線として、その感覚(触・温・冷・痛・圧)を一手に引き受けています。
- ビタミンD形成作用:紫外線を吸収して、ビタミンDを形成します。
- 貯蔵作用:余分な栄養分を脂肪として貯えます。
この他にも、主に脂溶性物質の吸収作用や呼吸作用等が行なわれています。
2.皮膚病の種類は
皮膚病は八百八病とも言われるように実に色々な病状を呈する病ですが、この皮膚病の中でも、今多い代表的なものを取り上げ、簡単に説明することにしましよう。
現代医学での皮膚病対策
現代医学では、皮膚の状態に応じて炎症を起こしていればステロイド剤や非ステロイド剤、化膿していれば抗生物質、探みが強ければ抗ヒスタミン剤等の外用薬を中心に使用していきます。
しかし、これらの療法はあくまでも対症療法でしかなく、なかなか根本療法にはなりません。
現代医学の薬物療法の中でも、使用頻度の高いステロイド剤についてお話ししましよう。
ステロイド剤
ステロイド剤には、抗炎症作用、抗アしルギー作用等が特に顕著にあり、皮膚病の治療には外用薬として使用され
ることが多いものです。このステロイド剤は臨床効果の強さによって「最も強い(strongeSt)」「非常に強い(verystrong)」「強い(Strong)」「中等度(medium)」「弱い(weak)」の5段階に分けられます。
ステロイド剤は上記のように色々な種類があり、皮膚炎の程度やつける部位、病人の年齢等に応じて紐かく使い分けられます。
ステロイド剤は的確に使用すれば効果があり問題も出にくいのですが、安易にそして漫然と長期間使用すれば…
- 皮膚が萎縮して薄<なる
- 皮膚の赤みが増す
- 皮膚の感染症にかかりやすくなる
- 内出血ができやすくなる
- 顔面に長期間使用したとき、目に緑内障を起こすことがある
…等の副作用を起こす可能性が非常に高<なります。
また、ステロイド剤の使用はあくまで対症療法でしかありません。
昔ながらの漢方薬での皮膚病対策は
「皮膚は内臓の鏡」と昔なら言われるように、漢方薬療法では皮膚の状態だけでなく、内臓の状態も踏まえた身体全体の病状や、病人の体質を考慮して、その状態に合った漢方薬を選薬していきます。
そこで、皮膚病に利用される漢方薬について次にお話ししましよう。
皮膚病に便用される漢方薬には、上記のようにたくさんの漢方薬処方があります。
では何故、こんなに用いられる漢方薬が多いのでしょうか。
上の図のように、漢方薬の考え方では病状を大きく6つ(三陽病・三陰病)に分類して選薬していく方法があります。
これらの分類のチャート図を見ますと、皮膚病という体表の苦情は、全ての病状群に出てきます。
つまり極論を言えば、全ての漢方薬は皮膚病に使用できるということにもなります。
となると、沢山ある漢方薬の処方群の中なら、現代人向けの最も身体に適した漢方薬を選び出すのは大変難しく、選薬間違いをすれば副作用の問題び生じることに:なります。
そこで、昔の人と比へると比較的体力がなく、胃腸も弱い現代人に負担とならず、又簡単に使い分けができ、使用して効果び期待でき、そして副作用のない漢方薬が、今本当に欲しい時と言えます。
現代人の皮膚病漢方薬は
昔の人と比べると比較的体力がなく、胃腸も弱い現代人のことを考慮して、皮膚の状態に応じて、間違いなく、しかも使い分けのしやすい漢方薬について、構成生薬の働きから纏めてみました。
1.かゆい皮膚病の一番手、漢方薬「温清飲加方」、牡蛎配合漢方薬外用剤
補血(血行改善とホルモンの乱れを整える)と補陰(体液など身体を構成する物質の不足を補う)のためのトウキ、シャクヤク、センキュウ、ジオウと肝の高ぶりを抑え自律神経を調整するサイコ、アレルギーを抑制するカンゾウ、湿疹の熱を除く、オウレン、オウゴン、オウバク、サンシシといった、生薬で構成された漢方薬を用います。
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また、皮膚の辛いかゆみを抑える漢方薬の外用剤は、皮膚表面の熱を取り、神経を鎮静させるボレイが主薬となった漢方薬をもちいます。
2.うんだ皮膚病の漢方薬
細菌感染が起こり、膿が生じている皮膚には、排膿を促進して皮膚の苦情を除くキキョウ、皮膚の患部の緊張を和らげるシャクヤク・キジツ、自然治癒力を高めるタイソウ・ショウキョウ・カンゾウなどの生薬を配合した化膿性皮膚疾患用漢方薬を用います。
漢方薬外用剤には、抗炎症・抗浮腫・肉芽新生促進・抗菌作用のあるトウキ・シコンとゴマ油・ミツロウを配合した漢方薬外用剤を用います。
3.ただれた皮膚病の漢方薬
ただれてジメつく皮膚病には、皮膚の血行を改善し、皮膚の栄養状態を良くすると共に、血行不良からの苦情を改善するオウギ・ケイシ・シャクヤク、皮膚の水分代謝障害を改善して皮膚のただれを改善するビャクジュツ・ブクリョウ、自然治癒力を湧かせて皮膚病を早く治すタイソウ・ショウキョウ・カンゾウなどの生薬を組み合わせた漢方薬を用います。
ただれた皮膚には、血行を改善し止血作用もあるウコン、殺菌・抗炎症作用のあるオウバクなどの生薬を配合した漢方薬外用剤を用います。
4.水虫・いんきんたむし・ぜにたむしの漢方薬
水虫、いんきんたむし、ぜにたむしなど、真菌(カビと同じ)が原因で起こった皮膚病には、皮膚の免疫向上と肉芽形成促進の働きがあるトウキ・シコンなどの生薬を使います。しかし、真菌類は皮膚の内部まで深く侵入していますので、合わせて皮膚内部まで深く浸透させる薬剤や、抗真菌作用、抗炎症作用のある薬剤を配合して水虫用の漢方薬外用剤を作る必要があります。
右上の表は、水虫の原因となる白癬菌とカンジダに対する水虫用漢方薬外用剤の抗菌力試験の結果を示しています。 水虫用漢方薬外用剤は、水虫の原因菌である白癬菌に対して、強い抗菌力を持っていいることが分かります。
また、白癬菌と同じ真菌類の一種であるカンジダに対しても、抗菌力があることが分かります。
5.いぼ、がんなど異常細胞除去の漢方薬
ヒシノミ・フジコブ・カシ・ヨクイニンの組み合わせは、WTTC製剤と呼ばれ、以前医学界に置いても抗がん作用があることで話題になった漢方処方です。肌荒れや頑固ないぼに非常に効果のある組み合わせです。
漢方薬を使って皮膚病の治療を上手く行うには
「皮膚は内臓の鏡」と言われるように、皮膚病の多くは、今起きている皮膚のみが悪いのではなく、内臓の異常や体質も大きく関与しているものです。
つまり、皮膚は一枚のガラス(one glass: ワンフラス)と同じで、その皮膚を美しく、きれいにする為には内側(内臓)から、そして外側(皮膚)なら磨かないと(治さないと)きれいになりません。
そして、抗がん作用があることで話題になった漢方処方となります。
下の表は、皮膚病の進行状況と選択すべき皮膚病用漢方薬の外用薬と内服薬を示しています。
(注意)
薬局製造医薬品として厚生労働省で認められている漢方処方の配合比や、構成生薬を変更することは、無許可医薬品製造に当たり、法律で厳しく罰せられます。上記の内容の漢方処方は、一般用医薬品として厚生労働省の許可を受け製造されている漢方処方です。
最後まで、ご覧下さいましてありがとうございました。
本内容は、大阪府堺市 三砂堂漢方 三砂雅則が解説いしました。