肝臓病と漢方薬

加齢やストレスで増え続ける肝臓病

肝臓疾患の患者数推移  食の欧米化、飽食の時代の中で代謝・排泄も乱れがち。益々増える肝臓病、切っても切れない関係にあるのが腎臓病漢方薬のところでもお話ししました肝臓と腎臓。
これら肝臓と腎臓に起こる病気について、厚生省「患者調査」のデータを調へてみますと、肝臓疾患による患者数は、この40年間でなんと約5~6倍にも増加しています。
また、年齢別のフラフから見ると、30歳代からの数が急激に増え、特に男性に多いことが分かります。
時代が変わるにつれ、忙しくなる社会、又肉食への食の変化等に加え、ストしスや過労が重なり、お酒で身体に負担をかける機会が増えたことも肝臓病増加に関係しているようです。                   `
年齢別肝臓疾患患者数

肝臓と腎臓は密接な関係にある臓器です。更に肝臓ぱ沈黙の臓器”とも言われるように症状が出にくい臓器でもあるのです。
手遅れになる前に肝・腎の対策を考えましよう。

どんな病気?肝臓病

肝臓は身体の中でも脳と並ぶ程の重い臓器で、体重の1/45~1/50を占めています。
この大きな肝臓は、我々人間体内の化学工場とも言われるように、実に様々な働きをしています。
そこで、肝臓の働きと肝臓に起こる病気について見ていくことにしましよう。

1.肝臓の働き

A 物質代謝

栄養素と肝臓の働き 肝臓では、吸収された栄餐物がどんどん身体に必要な形に作り変えられて血中に送られます。

またエネルギー源として貯えられる分は、必要に応じて分解され血中に送られます。

肝臓は物質を変化させる、いわぱ化学工場の働きをしているのです。

B 解毒作用

体外から人つてきた有害物質や、体内で生じた有害物質を毒性の少ない形に変えて解毒します。
この時、尿中に溶けやすいように水溶性物質に変えられ、解毒物は腎臓ひら排泄されます。

C 胆汁分泌

脂肪の消化などを促す働きのある胆汁を裂造し、また分泌します。

D その他

ビタミンの貯蔵・活性化、血液循環の調節、血液凝固因子の合成などの働きもあります。

2.肝臓に起こる病気

肝臓の病気は、一般的にはアルコ-ルが原因だと思われがちですが、さまざまな要因によって肝臓に苦情が生じてきます。
中でも、日本において主な原因となっているのは肝炎ウィルスです。肝炎ウィルスにはA・B・C・D・E・G型などがありますが、日本で多く見られるのはA~C型の3種類です。

ウイルス性肝炎の型と感染経路、自覚症状
その他にも肝臓の病気には以下のようなものがあります。

B 急性肝炎

(原因)

  • 肝炎ウィルスの感染によるもので、どの型でも起こってくる。
  • 薬物の使用も原因となることがある。

(症状)

  • 食欲不振や吐き気、全身倦怠感、発熱、腹痛、下痢などがあり、黄疸症状が出てくる。
  • 黄疸がはっきり出てくる頃には、自覚症状が軽<なり、熱や倦怠感が取れ食欲も回復してくる。
  • 自覚症状がなくなっても、肝臓はまだ回復しきつていないことが多く、急性期が長引くと慢性となるので、この時期の餐生が特に大切になる。

 

C 慢性肝炎

(原因)

  • 肝炎ウィルスでB、C、E型の一部が幔性化する。

(症状)

  • 特別な症状はなく、全身倦怠感、食欲不振、気分がすぐれないなどの不定の症状を訴える。
  • 無症状のことが多<、はっきりした症状が現れない状態が続<。
  • 肝機能検査では異常を示す。
  • 治療しがたく、長期に渡るため、肝機能障害を残すことが多い。
  • 又、約1割程度が肝硬変へと移行する。

 

D 肝硬変

(原因)
肝炎ウィルス、又長期に渡るアルコールの過剰摂取も原因となる。慢性肝炎なら移行してくる。
(症状)
肝炎に見られる症状に加えて、<も状血管腫などの血液循環障害や腹水がある。

E 脂肪肝

(原因)
食べ過ぎや運動不足、肥満により起こる。
(症状)
ひどくなると吐き気、嘔吐、黄疸などが見られる。

F 胆石症

(原因)
脂つこい食事や暴飲暴食に加えて、過労なども原因となる。
(症状)
胆管などの細い管にひっかかると、上腹部の激しい紅i痛発作を生じる。
その他に、吐き気や発熱、便秘などを生じることもある。
無症状胆石と言い、胆石を持つていながら全<症状の出ない場合も多い。

3.肝臓機能検査

肝臓は人体の化学工場と言われるように、複雑な機能をもつ器官であるため、障害を受けると血液や尿に諸種の変化を起こすようになります。その為、肝臓機能検査の項目も多く、多岐に渡って調査することになるのです。
実際、病院等においては、検査の目的に従い数種の検査を組み合わせて実施します。
ここでは、肝臓機能検査の中でも特に繁用されている項目を採り上げました。(値や単位については検査施設によって異なります)
肝臓の検査項目とその解説

現代医学での肝臓病対策

現代医学においての肝臓病病対策としては、下記のように様々な方法がとられています。

しかし、いずれも病変進行の阻止や障害部位の治療をはかるようなものはな<、補助的に働<ものが中心となっています。
つまり、肝臓病に対する積極的な治療法はないのが現状です。

肝臓病に対しては一般的に、このような方法がとられています。
肝臓病の現代医学での治療法

胆石症には、利胆剤を用い、痛む時には鎮痛・鎮痙剤を用います。

漢方薬での肝臓病対策は

昔から肝臓病や腎臓病に対しては、その病状や体質に応じて、諸種の漢方薬が使い分けられてきました。

肝臓病の漢方処方腎臓病の漢方処方

その後時代び進むにつn、古人の経験の積み重ねにより、以下のよつな漢方薬が生み出されてきました。
肝臓、腎臓の両方に働く漢方処方

では、このように肝臓と腎臓の両方に働く漢方処方が考え出されたのはなぜでしょう?
人間の臓器は単独で働くのではな<、いろいろな臓器が互いに助け合っています。その中でも、肝臓と腎臓の関係を見てみると、肝臓が故障し、解毒されなかった毒素が腎臓を刺激して、その機能を弱めてしまいます。
また、腎臓が故障し、腎臓で排泄できななった毒素が肝臓に回ってくると、肝臓はいくら解毒しても追いつかず、肝臓が過労してしまいます。

即ち、肝臓・腎臓いずれか一方が悪くなると、もう片万の臓器にも悪影響を与えてしまうのです。
従って、肝臓・腎臓の病気はそれぞれを単独で治すだけでは不十分であり、両万の働きを良<する方法が、より効果的なのです。

ところが、古<からの肝臓病漢方薬では、現代人の体質に適合しない場合もあることが分かってきました。
そこで、従来の肝臓病漢方薬における利点を取り入れて、現代の薬理の考え方を加味した肝臓と腎臓の働きを共に助けていく現代人に合った漢方薬が必要な時代になってきました。

現代人の肝臓病に合った漢方薬の1例「新茵陳五苓散」

肝臓病漢方薬 新茵陳五苓散は、従来からの漢方医学を元に肝臓・腎臓、双方の働きを整えるために、以下の九種類の生薬から構成された現代人向けの肝臓病漢方薬です。
現代人の肝臓病に合う漢方処方

新茵陳五苓散が、全ての肝臓病患者さんに合う処方ではありません。東洋医学的な診断を十分行って、証を確認した上で、漢方処方を選択する必要があります。

肝臓病漢方薬 新茵陳五苓散の薬理実験結果

では、肝臓病漢方薬 新茵陳五苓散が肝臓や腎臓に対してどのように働<かを、動物実験の結果から考えてみましよう。

A 解毒・二日酔いに対する働きは?

【実験】
肝臓には解毒作用があるため、働きが正常ならば体内に人つてきた毒に対処することができます。
そこで、実験の1ヶ月前からジョッキを投与したマウスと投与していないマウスに対して、エタノール(エチルアルコール)を投与し、肝臓に傷害を与えた後、肝細胞が傷害を受けると尿中に出てくるウロビリノーゲンを指標にして、その肝臓機能が回復する状態を調べます。
尚、今回の実験で与えたエタノールは、人間に換算すると成人男性が酒1升5合を、一瞬に飲んだことになる量です。

ウロビリノーゲンについて
胆汁中の色素が腸にある間に変化してできる物質で、腸なら再吸収、肝臓で再生されます。
但し、肝臓の働きが悪いと有用であるビリルビンに再生されず、ウロビリノーゲンのまま
の形で小使に出てきます。

【結果】
模式図で表すと、下記のようになりましたす。(ピンクの部分は肝臓が害されていることを示しています。)
エタノールを投与した実験動物に対する漢方薬の効果
肝臓病漢方薬 新茵陳五苓散を投与しておいたマウスの方が、肝臓を害されていても回復が早いことが分ひります。

B 肝臓病漢方薬は、有害物質に耐える力はあるか?

【実験】
マウスに有害物質であるエタノール(エチルアルコール)を投与し、急性毒性試験を行い、実験動物一群の半数を死なせる薬物(今回はエタノール)の量(LD50)を調べてみました。

【結果】
急性アルコール中毒マウスに対する漢方薬の効果
例えば、
LD50=31mg/kgということは、1kgの動物が31ml未満の|アルコールでは死なず、31ml以上では死ぬということです。

以上の結果から、肝臓病漢方薬 新茵陳五苓散の服用により有害物質に耐える力が1.4倍にまで大きくなってくることが分かりました。
即ち、肝臓病漢方薬 新茵陳五苓散を服用していると有害物質の侵入によっても傷害されにくく、肝臓機能を助けてい<働きがあることが分なります。

(注意)
薬局製造医薬品として厚生労働省で認められている漢方処方の配合比や、構成生薬を変更することは、無許可医薬品製造に当たり、法律で厳しく罰せられます。上記の内容の漢方処方は、一般用医薬品として厚生労働省の許可を受け製造されている漢方処方です。

最後まで、ご覧下さいましてありがとうございました。
本内容は、大阪府堺市 三砂堂漢方 三砂雅則が解説いしました。